Episord 69 渡りに舟 |
インドでの2カ月間、ジョンは真剣に瞑想に打ち込んでいた。しかし、彼は抱えている問題を見つめることは出来たが、それをどのように解決するかという処で止めてしまった。このことが意外と重要なことなのかも知れない。 |
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これに対して、ヨーコの方はと言えば、むしろジョンと自分との関係に疑心暗鬼になっていたとしても不思議ではない。毎日せっせとジョンに手紙を書いていたと言うことからすると、私のようなへそ曲がりなどは、もしや...などと考えてしまう。しかし、そう考えても不思議ではない条件は、確かに揃っているのである。 よくマハリシのことを知らなかった時、前述のヨーコのこの言葉を読んだ時には、ほう、そういうことがあったのかなどと思ったものだ。しかし、これは、あまりにも、ヨーコにとって(そしてジョンにとっても)都合のいい解釈ということになるのではなかろうか。 ジョンはインドを去り、ロンドン行きの飛行機に乗るや、ぐいぐい酒を飲み始める。久しぶりのアルコールの所為かどうか、シンシアに、かつての女性遍歴を語りだしたという。これは立派な言葉の暴力ということになるだろう。そしてケンウッドに戻ると、再び、酒とドラッグづけの日々を過ごすことになる。 この頃のことなのである。アップルで自分が「イエス・キリストである」と告白したのは。 ジョンとピート・ショットンは、その夜、遅くケンウッドに戻る。ピートは疲れ切って、早く休みたかったのだが、ジョンがこう言い出した。 「そうだ、ヨーコに電話しよう。彼女のことをもっと知りたいんだ。絶好のチャンスじゃないか」 “絶好のチャンス”もないものだと思うが...ジョンはやっぱり、どうかしていたと言うべきだろう。あるいは、「意馬心猿を制し得ず」と言うところか。 ジョンはロンドンのヨーコに電話して、タクシーでケンウッドに来るように説得した。タクシー代はこっちで持つからと。もっともジョンは全くお金を持っていなかった。彼はお金を持つという習慣が無かったのだ。シンシアが居なければ、どうにもならないわけだ。 ジョンはヨーコを乗せたタクシーが着いてから、やっとそのことに気が付き、慌ててピートに金を貸してくれと頼んだと言う。確かにどうかしてる。 「ヨーコは怯えて緊張しているみたいだった。色々話していたけど、何を言っているのか、僕には聞こえなかった。半時間ほどぎこちない会話につき合ってから、僕は寝室に退散したんだ。二人を残してね」(ピート・ショットン) |
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