Episord 70 信じられない光景 |
ジョンとヨーコの出逢いについては、色々と語られているが、ピート・ショットンの話は書かれていない。少なくとも私の知る限りでは、インディカ・ギャラリーでの2人の出逢いには、彼の存在を感じることさえ出来ない。 |
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ジョンは、シンシアに、「やあ」と一言、声をかける。 そして、すべては終わった。 こんな事実を知ったあとでは、後にジョンの語るlove&pieceも、随分、イメージが違ってしまう。そんな風に感じるのは私だけだろうか。その後も、ピートには、ジョンとヨーコのための家探しという仕事が待っていた。 ピートは散々駆けずり回って、これだという家を探し出す。画廊のあるゴシック様式で、ジョンなら絶対に気に入る筈のアンティークのオルガンも置いてあった。2人をその家に案内すると、思った通り、ジョンは気に入った。 「ところが、翌日になって、やっぱりヨーコは気に入らないらしいって言うんだよ。僕は頭に来て怒鳴ったよ。それなら自分達で家を探せよ。不動産屋を回ってチラシを集めて、物件を見て回ればいいじゃないかってね」 ビートルズの知人であるロバート・フレイザーは、ロバート・フレイザー・ギャラリーを主催していた。彼はヘロインに手を出して、刑務所生活を体験している。 ポールはジャンキーにはならなかったが、ジョンは彼を通してヘロインに溺れた。もっとも当人は、多くの体験者のようにそれを否定している。その根拠となるのは注射をしなかったからだというのだが、鼻から吸い込んでも、体に現れる症状に変わりがある筈はない。 「僕はどんなクスリも注射したことがない。“痛み”がある時は、2人で少しだけ吸ったことはあるけどね」2人と言うのは、ヨーコと2人と言うことである。 「僕もヨーコも非道いことを言われていた。僕らがヘロインをやったのは、ビートルズや他の連中が僕らを非道い目に遭わせていたから、その状態から逃げるためだった」 ようするに逃げたわけである。 ヨーコは、ロンドンに来た当初、ロバート・フレイザーに、自分の個展を開いてくれるように頼んでいる。 このとき断ったロバートは、のちにジョンに個展を開かないかと話を持ちかけ、再婚したばかりのジョンはヨーコと一緒の個展を開く。事実上これは、ヨーコのアイディアそのもので、彼女の個展と言ってよいものだった。 ヨーコはジョンと一緒になることによって、かつて断られたロバート・フレイザー・ギャラリーでの個展を開くことが可能になったわけである。ロバートは、当時、ポールにこう言っていたという。 「あれはかなり厚かましい女だよ。有名になりたい、有名になれるなら手段を選ばないというね。彼女なりのキャリアがあるわけさ」 |
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