Episord 58 友人達のことば |
1967の夏。エプスタインの友人達は、こんなことを語っている。 |
||
だが、それでも音楽に対する情熱は衰えることはなかった。長い長い沈黙を続けていたビートルズの人気の低下を心配した彼は、ジョージ・マーティンに、そのことを訴えた。 あの「ストロベリー・フィールズ・フォエバー」と「ペニーレイン」のレコーディングは、それがきっかけでビートルズのスタジオ入りを促し、実現したのだという。入院中、ビートルズ全員のサインが記されたお見舞いのカード付き花束が届けられた。ジョンからだった。 「君もご存じのとおり、僕は君を愛している。心からね。ジョンより愛をこめて」そのカードを見て、エプスタインは感激して泣いた。 退院祝いは、自らの手で盛大に行われた。医師から、もっと別荘を利用するようにと言われたエプスタインは、その別荘にビートルズとその妻達を招いた。ビートルズと共に居ることが彼の幸せだったからだ。 だが、ただ1人、ポールだけは姿を見せず、エプスタインを非道く失望させた。この当時、ジョージはインド文化にのめり込んでおり、彼の口からは、当然のようにそうした話題が出た。エプスタインは彼の言葉に興味を示し、ジョージとかなりの時間、話をしている。仕事以外のことで、こうした態度を見せるエプスタインは非常に珍しいということだった。 後にジョージは、この時のことをこう語る。 「悟りの境地の手前まで行っていて、そのまま行けば、新たな境地に達したかも知れなかった」果たして、ジョージの言う悟りとは、新たな境地とは、いかなることであろう。 いったい彼は、エプスタインに何を感じたのだろう。生死を超越したようなイメージが、エプスタインから感じ取れたと言うことなのであろうか。 だが、招待客の何人かは、入口でLSDやマリファナを手渡されたと言う。エプスタインは、体調を崩したのは、あくまでも過労からであって、ドラッグとは無縁なのだと信じていたことになる。 パーティ会場では、ポールに弾いてもらうことを予定していたピアノを代わりの者が弾いていた。エプスタインは「ポールにも来て欲しかったよ」と何人もの客に囁いていたと言う。 「これが僕にとって大切な催しだということは、彼も知っている筈なんだ」ドラッグでハイになりながらも、落ち込んでいる(?)のは、誰の目にも明らかだった。 |
||
57 59 |