Episord 57 大論争と大義名分 |
時間厳守は、エプスタインが信じる美徳の最上のものであった。彼は何よりも時間にうるさかった。だが、1967年には、しばしば約束した時間を守らなかった。 |
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この広告が発表された後で、エプスタインは「メロディー・メイカー」紙のインタビューで次のように語っている。 「私は、マリファナがアルコールより害が少ないことは間違いないと確信しています。マリファナとその効果については、とんでもない誤解があります。マリファナは有害に違いないと多くの人々が言っていただけなのに、その意見は疑問を持たれないまま、受け入れられてしまったのです。ソフトなドラッグに対する世間の考え方は、変化していくと信じています」 さらに思い切って、こんな表現までしている。 「犯罪だと考えられていた頃の同性愛と似たような状況だと思います。改正法が成立するまで、何年間も大人しく我慢するのは馬鹿げたことです。最近、同性愛罪の告発なんて耳にしないではありませんか」マリファナがさらなる危険な薬物への誘因剤となる危険性については、このように語っている。 「そういった危険があることは確かでしょう。しかし、アルコール依存症の人が危険な薬物に手を出す危険は既に存在しているのです。私の知り合いにマリファナを吸う人間がいますが、危険なドラッグに手を出す人間は1人もいません。それがどんなに危険なことかはっきりと解っているからです」 このように言いながらも、エプスタインは、誰もが試すべきだと言っているわけではないということは強調した。エプスタインは、マリファナに留まらず、LSD体験があることも公表しているのだから、彼の話には矛盾があるように思うが、LSDについても彼は容認する態度だった。 「LSDは、私のエゴを小さくしてくれました。LSDで危険な目に遭った人は極く少数です。少なくとも酒の飲み過ぎで死んだ人間ほど多くないことは確かでしょう。もしかしたら、アルコールと一緒にLSDを飲んだ場合にそうなるのかも知れません」 「LSDは自分自身をよく知る手助けをしてくれたと考えています。怒りっぽい性格も少しは変えてくれたように思います」 エプスタインは、66年頃から全部で6度ほどLSDを服用したと言われている。彼は、それらは全て感動的な体験だったと語っているのだ。 果たして、彼の言葉は何処まで信じられるのであろう。周囲の人間の証言によれば、エプスタインは、むしろ怒りっぽい性格になって来たように思えたそうだ。さらに、エゴが小さくなったというのを認めるとしても、それは彼のような職業の人間にとって好ましい傾向ではないと指摘する人もいる。 |
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