Episord 47 バイブルベルト地帯 |
1966年8月、第4回目のそして最後のアメリカ公演が行われる。この公演の5カ月ほど前、ジョン・レノンは「ロンドン・イブニング・スタンダード」のインタビューで、次のようなことを述べていた。 |
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事態は深刻である。しかし、事情をきちんと説明すれば、元々アメリカはビートルズを愛しているのであるから、コンサートは問題なく行えるだろう。キャンセルはいけない。 中止でもしようものなら、それこそ大変なことになってしまうだけだ。 この時、何とジョンは、頭を抱え泣いたという。信じられないことだ。果たして本当のことだろうかと疑問にさえ思うが、考えてみれば、このときジョンは、まだ26歳の若者なのだ。おまけに、数カ月前、フィリピンで危険な目に遭ったばかりだった。 ジョンが泣いている姿はエプスタインにはショックだったろう。そんなジョンは見たくない。だが、今はそんな場合ではなかった。なんとか事態を収拾しなければならない。その後も話し合いが続くが、ジョンは断固として謝罪を拒否した。 エプスタインは、ジョンのスピーチに自分の考えを盛り込もうとしたが、それも拒否された。結局、ジョンの記者会見は、全くこれといった準備をしないままに行われたのである。 「あの時は、若者にとってキリストや宗教より僕たちの方が訴えかけるものがあるんだと言っただけで、キリストをけなしたりするつもりは全くありませんでした。事実としてああ述べたまでなんです。社会現象としては本当のことですから。特にイギリスではそうだと思います。 僕らの方が優れているとか偉大だとか言ったわけじゃないし、とにかくキリストと自分達を比較するわけはありません。発言に他意は無かったんですけど、間違って受け取られたんでしょうね。これだけ騒がれるんですから」 「あの記事に書いたようなことは一言も喋っていません。反宗教的な不愉快なことを言うつもりなど全くありませんでした」 (※「あの記事」というのはイギリスの雑誌を引用したアメリカの雑誌の記事のことだと思われる) ツアーは決行された。コンサート期間中、宗教関係者により、コンサートに出掛けた若者たちを許すようにと祈りを捧げる集会が行われたという。だが、コンサートは大成功だった。 バイブル・ベルトでの演奏は、彼らのベストだったとも言われている。皮肉なことだが、毎日、毎日、同じことの繰り返しにウンザリしていたビートルズが、久しぶり緊張感を持って行った演奏だったということも出来るのである。 |
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