Episord 36 ビートルマニア |
「プリーズ・プリーズ・ミー」の成功で、ビートルズは全国区の人気を得るようになるが、その前には旅公演があった。ヘレン・シャピロ等をメインとするコンサートツアーである。 |
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リバプールでは、レノン、マッカートニー、ハリソンといったビートルズと同じ姓の家で、突如として電話のベルが鳴り出した。電話帳を調べて、片っ端から電話するファンが居たのである。 当然ながらビートルズの家族は、大変なことになっていた。勝手にどんどんファン達が押し寄せてくるのである。 最初から一貫して、これを喜んだのはジョージの母ルイーズ・ハリソンくらいなもので、ほかの家族はウンザリしてしまったというのが現実だった。 ジム・マッカートニーが異変を感じたのも電話からだった。最初は、ひっきりなしに掛かってくる電話にいちいち対応していたというからご苦労なことである。何か緊急なことがあっては大変だと考えたのだという。 そのうち、ファンは家にまでやって来る。やはり最初のうちは、遠くからよく訪ねてくれましたと言って、いちいち家に入れていたと言う。 ミミの場合はどうであろう。ジョンが、いつか夢破れて家に帰ってくると信じていた彼女も、次から次へとやってくるファンにいちいち対応していたようなのである。 彼女はジョンの古い持ち物をファンに分け与えていた。だが、ある日、体調を崩して2階で休んでいたことがあった。医師に電話をしていたので、裏口には鍵はかけていなかったのである。ところが、階下で音がする。 強盗に入られたと思ったミミが階下を見ると、2人の女の子が勝手に入り込んでいたのだった。これまで述べてきたミミの性格からすればお解りだろう。彼女は激怒し、出て行けと叫ぶ。2人の女の子は、出て行ったのだが、何と勝手口の鍵を盗んでいったのだという。 この事件のあと、ミミはリバプールを離れる決心をしたのだった。 リンゴの母エルシーと義父のハリーの場合は、突然の環境の変化に戸惑い、恐れた例である。郵便箱は盗まれる、ドアは削り取られる、持っていく物が無ければ、ドアや窓ガラスにペンキで文字を描かれるという有り様だった。 ついに耐えられなくなって引っ越すのだが、それまでには、やって来たファンにリンゴが使用した靴や靴下、シャツその他なんでもかんでも、くれと言われれば与えていたのだそうだ。 ちなみにリンゴには、なんとも奇妙な話がある。 中学時代、リンゴはその殆どの期間を病院で送っていたことは述べた通りである。就職のために書類を貰いに行ったときは、彼の顔を覚えていた者は誰も居なかった。 ところが、不思議なことに、彼の使用した机と椅子だけは覚えていたという話。リンゴの通ったその中学校では、「リンゴ・スターが使っていた」という机と椅子を持ち出して、それに座って写真を撮る人から、何がしかの金銭を徴収したのである。とんだ中学校もあったものだ。 |
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