Episord 28 親たちの苦悩と心配をよそに |
カスバ・クラブは十代のためのコーヒー・クラブということであるが、要するにこれは若者たちが集まる場所の提供である。ピート・ベストの母親はテディ・ボーイや与太者が集まるのを恐れ、それを会員制のクラブにした。 |
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「ポールたちが認められたことは分かっていた。最初の大きな仕事だから行きたいとお言うのも無理もない。でも、ポールは18歳で学生だったからね。結局、学生のパスポートで行ったわけだけど、私としては年齢に相応しい振る舞いを忘れないようにと言うしかなかった」 いつも彼らの音楽を聴いていたジョージの母と、時々、聴くことのあったポールの父とは、それぞれに息子たちのバンドの成長ぶりを知っていた。どんな時も息子の味方をするジョージの母親の言葉はいくらか割り引くとしても、ポールの父、ジムは、バンド経験者である。心配はしながらも、息子達がそこそこやるのではないかという手応えを感じていたのではなかろうか。 問題はジョンだった。ミミ伯母さんは手ごわかった。彼女は、ポールとジョージが遊びに来ることさえ禁じていたのである。 ジョンがまともな仕事を始めることを望んでいたミミは、ジョンがバンドから抜けることを望んでいた。ジョンには家でギターを弾くことも禁じていた。 だから、ジョンは長い間、ウソをつきまくらなければならなかったわけである。ミミは、ジョンが真面目に美術学校に通っているものと思っていた。あるいは、思い込もうとした。ところが、お節介な人というのは居るもので、ジョンがキャバン・クラブで演奏していることを知らせた人がいたのである。 ミミは、キャバン・クラブに出かけるのだ。 「キャバン・クラブという恐ろしい場所のことは初耳でした。探すのに時間が掛かりました。やっと見つけて入ると入場料をとるといいます。私は言ってやりました。『ジョン・レノンに会わせて下さい!!』」 「物凄い音の中で女の子たちが押し合いへし合いしています。ステージには近寄れませんでした。ジョンを引きずり下ろしてやろうと思ったんですけどね」 「私は化粧室で待っていました。汚いところでしたけどね。やがてキャーキャー騒ぐ女の子達と一緒にジョンがやってきました。でも、メガネをかけていないので、私に気づきません。メガネをしてやって私に気づきました。『こんなところで何をしているの、ミミ?』。私は言ってやりました。『結構なことね、ジョン。本当に結構なことよ!!』」 ミミは馬鹿げた音楽をやめて、まともな資格をとる勉強をするように何度も何度もお説教を繰り返したのだが、ジョンには全く効き目がなかった。 ビートルズが成功してから彼らが語った有名な言葉の1つとして広く知られるようになるその言葉をジョンは当時からミミに言っている。 「伯母さんにどう言われようと、僕は9時から5時までの人間で一生を終わるのはまっぴらだ」 |
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