Episord 22 E.プレスリー |
「すごい衝撃だった。落ち込むたびにレコードを聴いていた。レコードというものがどういう仕組みなのか解らない頃だったので、まるで魔法のようだった。『オール・シュック・アップ』はきれいだったなあ!」(※「オール・シュック・アップ」日本のタイトルは「恋にしびれて」) |
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彼はしばしばギターを抱えて歌ったが、それは演奏のためというより、歌うための小道具だった。それなのにカッコよく見せたのだから、これはもう生まれついての才能というよりほかないだろう。彼が初めて「エド・サリバン・ショー」に登場した時、カメラマンは、プレスリーの下半身を映さないように指示されたという。 腰を振って歌う彼は、エルビス・ザ・ペルビス(Elvis the Pelvis)と呼ばれたのである。彼の登場で、やや小太りで、ルックスもすでに中年のように見えたビル・ヘイリーはトップの位置から引きずり降ろされたのだった。 ポール・マッカートニーも、この頃の若者と同じようにエルビスから影響を受けた。プレスリーがそれまでの歌手に無かったことと言えば、服装等も若者に影響があったと言うことではなかろうか。ビル・ヘイリーなどは、スーツに蝶ネクタイといった、いかにも芸人というスタイルだったが、エルビスは、服装から髪形に至るまで若者を変えてしまった。ポールもそうだった。 「不良になるのではないかと心配した。細いズボンを履いてね。いくら言ってもダメだった。髪もその頃から長めだった。床屋に行っても、ほとんど変わらないので、『今日は休みだったのか』と言ったものだ」(ジム・マッカートニー) 早熟だったポールは女の子に関しての経験が、誰よりも早かった。そして、それを学校で自慢して喋り回ったという。 「悪い奴だったよ、僕は」 1956年の夏... ポールは、アイバン・ボーンに仲間がウールトン教会で演奏しているので、一緒に行かないかと誘われる。 「そうかい。じゃ、オレも一緒に行こうかな。女の子を引っ掛けるのも面白いしな」 ポールがそのバンドを見た印象はこうである。 「悪くはなかった。でも、演奏の仕方をまだあまり知らないようだった。ただガチャガチャ弾いているという感じだった」 「ショーが終わって、僕は連中に会いに行った。世間話をしたり、僕の腕前をみせてやったりした。『トウェンティ・フライト・ロック』や『ビー・バップ・ア・ルーラ』なんかを弾いてみせた。それからリトル・リチャードのものまね。要するに、全部やってみせたわけさ」 「ほろ酔い加減のあんちゃんが、酒臭い息を吹き掛けてきた。僕が演奏している時にね。『なんだろ、この酔っぱらい』と僕は思った。そしたらそいつは『トウェンティ・フライト・ロック』は好きな曲だと言った。こいつはちょっと詳しいかなと思った」 「それがジョンだった。僕は14でジョンは16。だからすごい大人に見えたよ」 |
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