Episord 19 悪ガキ大将ジョン |
母親のあとを追って行ったジョン。だが、ジョンを育てたのは伯母のミミであった。 |
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「でも、私は事実をそのまま話したくありませんでした。 あの子は幸せでした。それなのに、あんたのお父さんはダメな人だったから、お母さんは他の男の人と一緒になったなんて言えません。ジョンは幸せでした。いつも歌を唄っていました」 ジョンは自分の心を押し隠すようにしていたようだ。ミミはもちろん、3人の叔母達にとっても、ジョンはとても明るい性格で、幸せな子供だったというのが共通した記憶となっているのだが... やがて中学に進学する。 郊外にあるクオリー・バンク中学でもジョンはケンカに明け暮れる。 「僕が喧嘩っ早かったのは人気者になりたかったからだ。リーダーになりたかった。おべっかをつかったりするのはイヤだった。みんなが僕の言う通りに動き、冗談に笑い、僕をボスにすること、それが望みだった」 小学校のときには、悪さをしても正直にそれを白状して認めたものだが、中学ともなると事情は違ってきた。 「それがバカバカしいということに気づき始めた。いずれにしろ叱られるんだ。僕は何から何まで嘘をつくようになっていった」 この当時、ジョンの仲間だった者は1人減り、2人減りしていく。彼と一緒に居ると学校中から目の敵にされてしまうからだ。 最後まで残ったのは、ピート・ショットンという小学校時代からの悪仲間だった。 「僕らが悪さをして初めて教頭の部屋に呼ばれた時、教頭はデスクで書き物をしていた。僕とジョンを両側に立たせて、教頭は書きながらお説教を始めた。 するとジョンは、ハゲ上がった教頭の髪の毛をいじり始めた。てっぺんにちょっとだけ残っているそれを。ところが教頭は盛んに頭に手をやったが、ジョンがいじっていることには気付かないんだ。これは、もう、ヒドイもんだった。噴き出すのを堪えるのに死ぬ思いをした」 まだ、その先がある。 「いたずらをしながら、ジョンは小便を漏らしてしまった。 ほんとに。短い半ズボンを履いていたからまだ低学年だったと思う。やがて小便がポタポタと床に垂れて濡らしてしまった。教頭が振り向き、びっくりして言った。『なんだそれは?なんだそれは?』」 小便を漏らすというのだから、おそらく恐怖心があったはずだが、それでもいたずらをしていたジョン。本心を覆い隠すために何かをしないではいられなかったということなのだろうか。 いつもジョンの味方をしてくれたジョージ伯父さんは、ジョンが13歳のときに突然亡くなる。これはジョンにとってはかなりのショックだったようだ。 「ジョージはいつもジョンの味方でした。2人が仲よくしているので嫉妬したくらいです。ジョンはジョージの死に打撃を受けたようでしたが、表面には出しませんでした」 ジョージ伯父さんが亡くなってから、ジョンはその欠落部分を補うかのように、ある人物と頻繁に逢うようになった。 実の母親のジュリアである。 |
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