Episord 14 埒が開く |
ジョージ・マーティンは、自分が高く評価したビートルズがEMIでは、評価されなかったと述べている。 |
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ディック・ジェイムズのオフィスには、約束の時間より随分早く着いてしまう。時間に几帳面なエプスタインは、受付で恐縮しつつ、「ここで待たせて頂けますか」と述べた。 受付の女性がジェイムズに連絡すると、オフィスからジェイムズ本人が、待っていましたとばかりに現われ、笑顔で彼を迎えたのだった。ディック・ジェイムズは、元はそれなりのヒット曲も出している歌手だった。その一方で、曲づくりにも係わり、やはりヒット曲を生み出している。 ちょうど1年前に、現役を引退し、出版社として独立したばかりだった。44歳の彼は、まさにハングリーな状態だったのである。 エプスタインと会い、すぐに、出来たばかりのシングルレコード「プリーズ・プリーズ・ミー」を聴き終えたジェイムズは、興奮していた。彼もまた、ヒット曲を見い出す才能に長けた男だったのだ。 エプスタインは長期契約の話を持ちかける。これから、話は急展開で進み始めた。 「プリーズ・プリーズ・ミー」が間違いなくナンバーワンになると信じたジェイムズは、その場で電話を掛けるのだ。元歌手だった彼は、各方面に友人知人がいた。 彼が電話した相手は、フィリップ・ジョーンズ。テレビ番組のプロデューサーだった。 ジェイムズは、リバプール出身の素晴らしいグループがいる。彼らを土曜のショーに出演させてくれないかと頼むのである。友人とはいえ、ジョーンズにはジョーンズのポリシーがあった。自分で確かめるまでは、予定を変えてまで出演させるわけにはいかないという返事だった。 そこで、ジェイムズがとった行動は、いかに彼が「プリーズ・プリーズ・ミー」に感激したかを物語るものと言えるだろう。彼は、電話を通して、曲を聴かせたのである。 曲を聴き終えた友人は答えた。 「サウンドはとてもいいようだ... OK。今週の土曜のショーに出演させよう」 電話を終えたジェイムズが振り向き、エプスタインに言う。 「土曜の予定が空いているか確認してくれ。テレビに出られるんだ!」 |
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