Episord 2 告白 |
1950年9月10日。 ブライアンは、祖父と父の経営する会社に入社する。父親のハリーは、ブライアンに厳しくビジネスを基礎から指導した。 |
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実家に戻った彼は、生き生きとした様子で仕事を再開した。ブライアンにクラシック音楽の趣味があり、膨大なコレクションを所有していることを知っていた父のハリーは、家具店の一角で扱っているピアノや楽譜の他に、レコードも加えることを考える。除隊ショックを忘れさせたるためにも、新たな仕事を息子に任せるということは、父親としても満足のいく考えであった。ブライアンは、その期待に応え、見る間に営業成績を上げる。彼の情熱は売り上げに見事に反映したのである。 これに気をよくしたハリーは、息子にはリバプールから離れたオシャレな街の家具店を任せるべきだろうと考える。そして、またしてもブライアンは期待に応え、見事な営業成績を上げるのだった。息子に商才があることは間違いなかった。ハリーは満足し、母のクイーニーも息子の芸術的なセンスが仕事に役立つ日が来たことを喜んでいた。 ブライアンは多数の知り合いがいたが、親友は少なかった。パーティーなどは嫌いではなく、むしろ自ら積極的に参加していたが、かといって必ずしも居心地が良さそうでもなかった。この傾向は晩年まで続く。 ある日、家族はブライアンの「告白」を聞かされることになる。ブライアンは、人生で最も辛かったかも知れない日を自ら迎える決心をしたのである。このままでは、どうしようもなかった。両親、そして弟のクライブと夕食をとっていたときに、“それ”は告げられた。家族に、衝撃が走った。 母親のクイーニーは、直感的に予期するところがあったという。だから、彼女はブライアンの告白のあと、彼を抱きしめてやった。それでもブライアンは、そのまま寝室に行ってしまう。父親のハリーと弟のクライブは、動揺を隠すことが出来なかった。 以後、ブライアンの話を聞くのが、クイーニーの毎夜の習慣となった。ブライアンの心からの言葉を聞くことが出来るのは彼女しか居なかったのである。“そのこと”が、ブライアンに及ぼした影響の大きさを考えないわけにはいかなかったと、クイーニーは語っている。 「恋愛関係については、絶望的でした。私はよく言いました。『率直に訊くけれど、ブライアン、一緒に暮らせるような気の合う相手をなぜ見つけられないの?』 つまり、“男性”のことを言ったんですけれど...」 |
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