私が愛してやまないビートルズ、そしてジョン・レノン。そのジョンに対しての気持ちを書くはずが、ビートルズを題材にした、
当人の回顧録になってしまいました。単なる一人の人間の戯言に過ぎません、不快に思われる方は読まないようお願いします。
拝啓、敬愛なるジョン・レノン様 G
第8話 失恋の痛手
 高3になる春までの僕と彼女との交際は良好だった。学校帰りに駅で待合わせをし、毎日会ってはとりとめのない話をしたりしていた。そのような毎日が僕は幸せで、彼女の僕に対する気持ちをさらに確かめたくてある日訊いてみた。
「お前、俺のこと好きか?」僕はすんなりと返って来るであろう彼女からの言葉を確信していた。
「わからへん...」
「わ、わからへんって...どういうこと?」意外だった。僕は彼女の意を飲み込めず聞き返した。
「最近、ほんまに好きかどうかわからへんねん...」
「......」
「Cuts君にはもっと他にしたい事やしないといけない事があると思うねん。だから私に構わんとしたい事をして欲しいって思うねん」彼女は僕から目を逸らすことなくそう言った。
僕は息が止まりそうだった。何気なく彼女の気持ちを確かめるつもりが、まさかこういうことになるなどとは思いも因らなかったのだ。
その本意は何なのかと彼女に問い正したが、それ以上は応えてくれなかった。僕はその日、呆然と言葉を無くしたまま彼女と別れた。
若い男性が皆そうであるように、僕も例に漏れずあまりに子供だった。いくら考えても事の顛末、真相は想像に遠く及ばないものだった。来る日も来る日も彼女の事を考えたが、何がいけなかったのか一向に解らなくて恥ずかしながらも毎夜泣いていた。
当時風の「22才の別れ」がヒットしていた。

 ♪あなたに さよならって
  言えるのは 今日だけ
  明日になって またあなたの
  暖い手に触れたら きっと
  言えなくなってしまう そんな気がして♪

曲を聴いているだけで泣けた。何度泣いたことだろう。
あんなこと訊かなければよかった。訊かなければ彼女もあのように言わなかっただろうし、未だに続いていたはずだ。余計な事を言ったばかりにこんなことになってしまって...事実そのような問題ではないと解りつつも真相を未だ見つけられずに僕は悶々と過ごしていた。一度だけ彼女に電話をしてやり直して欲しいとの意向を伝えたことがあったが、一旦引き違えたレールは元に戻らなかった。
こうして僕と彼女との交際は自らの意に反して呆気なく終わってしまった。1年と4ヶ月の楽しい思い出だけが頭の中を堂々巡りするような高3の春だった。そのかなり後、僕も大人になり彼女が別れを切り出した意味と自分が子供過ぎた事を理解出来るようになるのだが...

当面の間、僕はショックのあまり腑抜けのようになっていたが、夏が過ぎる頃にようやく自分を取り戻して彼女が言った「僕のやりたい事」に打ち込むべくバンドに集中しようと考えられるようになった。
秋の大文化祭はもうすぐやって来る。

F H

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