私が愛してやまないビートルズ、そしてジョン・レノン。そのジョンに対しての気持ちを書くはずが、ビートルズを題材にした、
当人の回顧録になってしまいました。単なる一人の人間の戯言に過ぎません、不快に思われる方は読まないようお願いします。
拝啓、敬愛なるジョン・レノン様 C
第4話 バンド結成
 荒木君と武澤君の目に一番興味深く映ったのは、他でもないドラムセットだった。煌びやかなドラムセットを間近で見ると誰しも魅入られる。彼等は代わる代わるに座ってはドラムを叩いた。
それから、取り留めのない5人編成のバンドは、月に1回程度の練習を繰り返す内、ドラムの脱退でやがて4人となった。僕はヴォーカル&サイドギター、リードギターには後輩のキサブロー、あとの二人のどちらをベース、ドラムにするかというのが悩みだった。
荒木君は歌が上手いがギターは全くの素人、武澤君は何とかギターは弾けるが歌はイマイチ。「帯に短しタスキに長し」とまでにも届かない二人。いずれにしても、どちらもドラムをやりたかったみたいで、よく揉めていた。とりあえずは荒木君がベース、武澤君をドラムとし、曲によって入れ替わるという何とも優柔不断な編成にしていた。
荒木君はベースも弾けなければ楽譜も読めないわけで、まるでスチュアート・サトクリフのようだった。だから教えるのは一苦労で、とりあえず僕自身が弾けるように練習してから、ひとつひとつ教えるのである。まず1小節めから4小節めまで、それが出来ると次の4小節を覚える。それを覚えると頭からその4小節の終わりまで、といった具合に。
それは僕にとって大変な労力だったが、当の荒木君にはもっと大変な事で、1曲を完成させるまでにかなりの時間を要した。まして彼が弾きながら歌うなど、ほど遠い夢物語のようにも思えた。
そんな僕達だったが、当面の目標は2年後の文化祭出演という暢気なもので、焦るところは何処にも無かったのが幸いしたのか、はたまたそれが災いしたのか、何処に出演するでなく、誰に聴いてもらうでなく、ただバンドをやっているという事だけを楽しんでいたのだと思う。そのうち何とかなるだろう〜みたいなノリだったように思う。
時にリスナーとして彼等の気のある女の子を招いたりしていた。いいとこを見せたい、若い男子なら当然のこと。一度ゲット・バック・セッションのルーフトップばりに屋外でやった覚えがある。よせばいいのに、それも真冬。寒さで女の子達は顔色が変わっていた。相手の気持ちも状況も考えぬ稚拙な若い男達は、ただただ自らの格好良さだけに酔いしれていたようだ。
「抱きしめたい」「Get Back」「It's Only Love」「Back In The USSR」「Let It Be」「Day Tripper」など出来るだけやりやすい曲を選び、コピーと呼ぶにはほど遠い適当なカバーアレンジでやっていた。
しかし、そろそろちゃんとした楽器を揃えねばならない。

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