私が愛してやまないビートルズ、そしてジョン・レノン。そのジョンに対しての気持ちを書くはずが、ビートルズを題材にした、
当人の回顧録になってしまいました。単なる一人の人間の戯言に過ぎません、不快に思われる方は読まないようお願いします。
拝啓、敬愛なるジョン・レノン様 D
第5話 レスポールと彼女
 高校1年の冬休みはエレキギターを買うために郵便局でアルバイトをした。女子は局内で仕分けをしたりするのだが、男子は自転車に乗って郵便物の集函だ。1日4,5回決められたポストを巡回するのである。最初は少し緊張して真面目にやっていたが、少し慣れてくるとついついいい加減さが顔を出す。僕は必死で自転車を漕いでポストを廻り、その余った時間で近所の友人の家でお茶を飲んだり、お菓子をお呼ばれしたりして過ごす。解りやすく言うと「サボリ」をやっていた。
ま、1日1,700円という安いバイト料だったし、などと言い訳にはならないが、10日間働いて念願の自分のエレキギターを手に入れようと必死だった。
メーカーなどはさして拘らなかったが、形には拘っていた。普通ならリッケンバッカーのコピーモデルとなるのだろうが、どういうわけか僕はレスポールに憧れていたのだ。「Revolutoin」のプロモ写真でのジョージの持つレスポールが何故か目に焼き付いていた。だから年明け早々大阪に出向き、ミキ楽器でフレッシャー製の黒いレスポールを買った。黒地に白いバインディングが映えてカッコ良かった。
当時その写真が白黒だったため、僕はそのレスポールが黒だとばかり思っていたのだが、それがワインカラーだと知るのはその数十年後のことになる。
同じくその頃、ギターを得て嬉しかったこと以上に嬉しいことがあった。年末に彼女が出来たのだ。
中学の3年間好きだった女の子。告白するかしまいかでかなり悩んだのだが、手をこまねいていても埒が開かないと、勇気を出して年末に電話で告白したらOKしてくれたのだった。
天にも昇るような気持ちとは、こういう事を言うんだなぁと始めて実感したのがこの時だった。そうと決まれば即デートである。鉄は熱いうちに打たないとみたいな感じで映画に誘った。
奈良市内の少し外れにある場末の映画館で「Help」と「Let It Be」を2本立てで上映していると言うので、それを見に行った。映画は「Help」から始まった。彼女は殆どビートルズの事を知らないので少し心配していたのだが、「Help」は物語仕立てなので結構楽しめた様子だった。僕はというと動いているビートルズを見るのは始めてで、それはそれは感動モノだった。「恋のアドバイス」のシーンなどは超鳥肌モードだったのを覚えている。
今でもそのシーンを見ると当時の空気感や香りみたいなものを思い出す。今ならビデオ、DVDがあるのでどのような映画でも見ることが可能だし、何度も繰り返し見られるが、一発勝負の当時は目と心にに焼き付けておかねばならなかったからか、その思い出というのは今でも鮮明に残っている。
問題だったのが次の「Let It Be」 ドキュメントタッチの映画なのでマニアには良いのが、何も知らない彼女には訳の解らない退屈なシーンが続く。さすがの僕も退屈さを隠せない状況で、彼女の気持ちを考えると気が気ではなかったが、彼女も何とか我慢してくれたようだった。
冬の寒い映画館での数時間、冷気が足元を伝って体が冷えたが、気分はとても暖かかったように覚えている。
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