◆「アルバム一番の難曲」◆ You Never Give Me Your Money
手前味噌ですが、今回のこの曲についての制作記です           Download

 「You Never Give Me Your Money」昔から慣れ親しんだ曲です。アビーロードB面のメドレーの始まりです。この曲は単なる一つの曲なんですが、めまぐるしく変化する曲調に、この曲自体がメドレーのような錯覚を起こします。静かにゆっくりと流れるピアノと優しげなギターのオブリガード、独り言のようなヴォーカルとコーラスが2コーラス。とそこからいきなりノリのいいランニングベースとファンキーなチェンバロ。声色と唄い方を変えたポールのヴォーカルが入って、次第にツインリードが絡み合いながら最高潮に導いて行きます。エンディングは「1・2・3・4...」の繰り返しと共に虫の声と鐘の音で眠りに誘われて行くような幻想的な感じを受けます。
ビートルズファンはもちろん、私も含めてそうですが、アビーロードのB面のメドレーは最高傑作だと口を揃えて言います。確かにそれは間違いのないことだと思いますが、今回、この曲とじっくり対峙するにあたってこのB面メドレーに対する認識が少し変わったように思いました。これはあくまで個人的な私見に過ぎませんが、このB面メドレー、実際には純然たるメドレーと言える部分って殆ど無いに等しいのではないかと思います。
メドレーの最初であるこの「You Never〜」これは次の「Sun King」に直接繋がってません。ただ、虫の声と鐘の音で繋がっているに過ぎません。「Sun King」が終わってドラムのフィルインで突然に入る「Mean Mr Mastard」と「Polythene Pam」の繋ぎは元々マスタードの次に「Her Majesty」があった為にエンディングを切り取って繋いだだけ。「Polythene Pam」と「She Came In Through Yhe Bathroom Window」は確かにメドレーらしいつながり方をしていると思います。
ここで一段落というか、終章へ向けての曲「Golden Slumbers」が始まります。この曲はしみじみとポールが歌い上げて行く中で自然と「Carry Thet Weight」に繋がります。というか、これは逆にメドレーではなく1曲のような印象を受けますが、なんと言っても圧巻なのが、この曲の終わりで流れる「You Never〜」の最初のメロディー。ここで始めの部分に回帰するイメージというか、最初とここまでを包み込んだというか、ひとまとめとしてループしているような錯覚に捕らわれるんですね。そして劇的な「The End」へと繋がっていくのですが、ここでもトリックが使われていると思います。「The End」としては1曲のはずなんですが、リンゴ唯一のドラムソロで分断されるため、ここでもメドレー的な感じを受けるんです。ポール、ジョージ、ジョンの三人が弾くリードが入り乱れての共演。こうしてB面メドレーは華々しく完結されるんですが、じっくり考えると本当にメドレーらしいものって真ん中の「Polythene Pam」と「She Came〜」くらいなものだと気付きます。ところが終わった時に大作映画を見終わったような感覚を起こさせるのは1曲内を細かく変調させたりして短い曲が数多く存在しているような感じを与える彼等、特にポールとジョージ・マーチンの才たるところだったのだと思います。
このB面のキモはやはり、最初の曲「You Never〜」と「Golden Slumbers」だと思います。特に「You never〜」はメドレーでないのに、4曲くらい聴いた気にさせます。この曲には、これから始まるメドレーの乱舞を予感させる狙いがあったのではないのかと思いました。
 さて、肝心の制作記ですが、今までで一番困難を要した作品だったと思います。私、バカザメ君、Teraの三人、各自がかなり苦労したと思います。まだ、私の苦労が一番軽かったかも知れません(笑)
バカザメ君はこの曲の為に2週間、みっちりとギターの練習に励みました。コメントにも書きましたが、ギターの収録には4時間弱。それも、殆どが集中的にです。曲が始まってから2コーラスが終わる たった24小節、時間にして65秒の部分を収録するのに2時間掛かりました。
本当にこの時はこの日中に終わるのだろうかとさえ正直思いました。お互いじっくりと腰を据えての作業を辛抱強く重ねた結果、素晴らしいギターワークに仕上がったと思います。さすがの彼もバテバテで最後は少々キレ気味でしたから(笑)
さらにキレかけたのは、やはりすべてをとりまとめたTeraだと思いますね。ヴォーカルとコーラスが6トラック、ギターは4トラックに収録しましたが、厳密にいうと編集時に10トラックにまで分けたという凄まじいもの。さすがのTeraの編集ソフトもトラックが足りなくなり、最終Mixまでに数々の複合調整が行われました。本人はあまり内情というか苦労話をしたがらないタイプなので(笑)直接こちらには何も言いませんが、彼の苦労が伝わって来ます。
最初にオケのMix。この時に一番気になったのはベース音。音捜しをバイオリンベース、ゼンオンリッケン、リッケンバッカー4003で試し、MTR側のエフェクトとPOD側のセレクトを色々と組み合わせてチェックしてみるという作業が続きました。最終的にはリッケンバッカー4003の生音でプレイした音源をEQで調節することで何とか落ち着きましたが、試行錯誤の連続で私も何度弾いて録り直ししたか解りません。弦のテンションの高いリッケンはかなり指に堪えました。
この他、隠れた処で微かに聞こえるジョンのギタープレイの隠し味...これに気付いた味の職人Tera店長、またもや凝りに凝って再現してます。こうなると、もう「ビョーキ」の世界(爆〜)よく聴くと、あらゆる処に職人ワザの渋い処を残してます。
「今までで一番の難曲かも知れません」から始まり、「もう、思い残すことはありません・笑」とまでTeraに言わしめたこの作品。お陰様で何も言うことのない完全コピーとして出来上がりましたが、みんな二度とやりたくないでしょうね、きっと(笑)
                                          2007,05,06  by Cuts

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