◇「切ない響き」BAKAZAMEの”Strawberry Fields Forever”ギター考
「While My Guitar〜」「Yer Blues」のギタープレイでおなじみのBAKAZAMEことイカのツメ君が
今回の「Strawberry Fields Forever」のギターバッキングについて語ります。
 ストロベリー・フィールズ・フォー・エヴァーのギタープレイといって誰もが思い浮かべるのはコーダのフィル・インでしょう。わずか2小節の断片的な演奏ながら深く印象に残ります。とは言え、前半部のバッキングにもなかなか捨てがたい魅力があります。
この曲の前半部にあたるTAKE-7の完全版は、海賊版の暗躍のおかげでかなり以前から知られており、私もそのシンプルな美しさにいたく感激してコピーを試みたものの、意外な複雑さに挫折してしまったのが多分10年くらい前のことでした。
そして今回Cutsさんの要請を受けて2週間ほどの猶予をもらって再挑戦することになりました。

TAKE-7のキーはAですが、問題はその低音部。“Misunderstanding all you see”の“see”と、あと2ヵ所の部分で、ローDが半音グリスアップされているように聴こえるのです。それを再現するためには6弦をCまでチューニングダウンすることになり、2全音も下げるとテンションもベロベロになってしまいます。今でこそ重低音を求めた7弦ギターのようなものも存在しますが、時は1967年(とことん正確に書くならば、このテイクが録音された66年暮れとなります)、いくら求める音に執念を燃やすビートルズ、そしてジョン・レノンといえども、果たしてそこまでするだろうか?という疑問が湧いてきます。また、それ以外のコードもひどく押さえにくいものになってしまい、自ら「フィンガリングは下手だ」と語っているジョンのプレイとはとても思えません。

デモやTAKE-1のキーがBだということもあり、試しに練習用CDプレイヤーの可変機能を使ってTAKE-7をスピードアップさせると、なんとなくおどろおどろしたジョンのヴォーカルが、私達のよく知っているジョンらしい声になり、演奏も心なしか自然に聴こえました。
それぞれのコードも一般的なフォームとなり(E、F#、B、G#m、この美しいメロディーがたった4つの基本コードだけなんて!)6弦を1音下げることで無理のないポジショニングが可能となりました。キーがBなのにドロップDチューニング?という疑問は残ってしまいますが、例えば1カポでB♭、もっと別のオープンチューニング、ミディアムゲージでチューニングダウンさせる(ビートルズはいつライトゲージを導入したのか?という考察もしてみる必要がありますね)、あるいはチューニングアップさせる、といったその他のより複雑な選択肢よりもずっと弾きやすくなるようです。今回のCuts-Teraバージョンは正規テイクのB♭であるため、全体を半音下げのドロップDチューニングにして演奏しました。
ついでながらコーダの部分を私は1カポのノーマルチューニング、6フレットポジションで弾いています。これはジョージによるプレイだと思うのですが、どのキーで弾いているかの判断は難しいところですね。低音部に開放弦の響きが、高音部には太さと粘りが感じられるので、3弦と5弦を使うという選択に落ち着きました。
サウンドメイキングについては残念ながらホンモノのアンプを持っていないため多くを語れません。バッキングはとてもカジノらしい音色がしていますね。ジョージはSGを使っているのだと思います。私はどちらのパートも自分の愛器であるSGで弾きましたが、ソリッドとハコモノの違いか若干深みが足りないような気もします。Cutsさんのカジノを借りて弾くべきだったかも知れませんが、他の人のギターで録音やライブの本番に臨むのはたとえアマチュアであっても難しいものです。

全体的にギターがあまり前面に出てこない曲なので、このような小難しい解説は多くの人にとって無駄と感じられるかも知れませんが、私は何よりあのアルペジオともフレーズともつかぬバッキングパターンに心惹かれていたので、是非とも自らの指でそれを再現してみたかったのです。
アンソロジー2に収録されたコーダ部分でさらに展開されるこのパターンの郷愁を誘う切ない響きをお聴き下されば、共感して下さる方も少しはおられると思います。ご静聴ありがとうございました。

                                                 by BAKAZAME


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