坪単価がいくらとは言うけれど...

よく坪単価いくら、とか坪あたりいくら掛かったとか耳にしますよね。これは建物の建築費用を延べ床面積を坪換算して(1坪=約3.3u 坪=u×0.3025)割った金額です。30坪の家が1,500万円掛かったとすると、1,500÷30で坪あたり50万円となる訳です。

あなた 「建て替えたんですか、いい家ですねぇ、で、いくら掛かったのですか?」
家主  「えぇ、坪50万円で出来ました、どうです安いでしょう!」
あなた 「へぇ、坪50万円でこんなに立派な物が建てられるのですか・・・で、何坪あるんですか? えっ30坪?」
      (そうか、30坪×50万円で1,500万円かぁ...じゃあ、うちも建て替えるか...)


ちょっと待って下さい。あなたの目にはその建物のみならず、庭や生け垣、外柵、ガレージその他の全ての物が映っていたのではないでしょうか。
本来、坪単価とは本体工事と別途工事までを示すのが一般的なのですが、何処までの費用を算入するかという決まりもなく、業者や言う人によってまちまちであり、決して本質が解る物ではありません。
上記の会話での坪単価は、あくまでスタンダードな建物本体の単価である可能性が大きいと思われます。現在目に映っている建物に付帯する物が全て含まれている訳ではないのです。
また、家主の言った建物の坪単価にしても、何処までの部分を含めて言ったのかという疑問はあります。
この坪単価が建物本体の費用であったにしても、照明器具、冷暖房設備器具、カーテン・ブラインドの類等が含まれた価格かどうかは解りません。
たとえば、本体工事費が30坪で1,500万円だったとしましょう。そこで照明器具の費用が45万円、冷暖房設備器具が85万円、カーテン・ブラインド20万円という具合にj実際は本体費用と別になっていたとします。合計150万円ですよね。これを床面積の30坪で割ると、1坪あたり5万円になります。すでに坪単価は55万円になっています。
さらに「建て替えた」という会話から、以前の建物を解体撤去したことも伺えます。解体撤去及び廃材処理費用を約120万円としましょう。これを加えると坪単価は4万円上がり59万円となります。
さらに外構工事の植木、植裁、外柵フェンス、門扉、カーポートなどに180万円掛かったとします。坪単価にすると6万円のアップとなり、これまでの総工費は1,950万円、実際の総工費の坪単価は65万円となる訳です。
ですから人から聞かされる坪単価を鵜呑みにすると、とんでもない間違いを起こしてしまい、予算設定やローンの借り入れに失敗してしまうケースもままある事なので注意が必要なのです。
よって、最初に全体予算を設定する時に何処までが含まれていて、何が含まれていないのかチェックし、また付帯する工事を行うのにはどれくらい掛かるのか聞いておきましょう。

 ■ここでは特に本体工事に含まれない物などを紹介しておきます。
1.
 冷暖房設備(電源及び室外機用スリーブ孔は含む)
2.
 電話機および通線工事(通線は基本的に電話会社がします)
3.
 CATV、インターネット、LAN等特殊設備
4.
 冷蔵庫などの家電製品や置き家具
5.
 カーテン・カーテンレール・ブラインドなど室内装飾品
6.
 テラス・バルコニー・ウッドデッキ・濡縁などエクステリア類
7.
 植栽・生け垣・造園工事
8.
 玄関へのアプローチ部分の工事や門扉フェンス、外部の水まわりや
 照明など屋外電気工事を含む外構工事
9.
 地中障害物撤去(基礎を施工する際に出土する大きな岩石の除去等)
10.
 地盤調査およびその結果必要となった場合の地盤改良工事
11.
 給水引込み工事及び、引込分担金、下水道負担金
12.
 セットバックが発生する場合の道路後退工事
13.
 その他見積書に記載のないもの

        
 ■基本的に含まれますが、たまに含まれずに計上されるもの
1.
 屋外給排水工事
2.
 古屋解体撤去工事及び廃材処分費
3.
 作り付け家具などの造作工事
4.
 照明器具工事(基本的なベースライトのみを含むことが多い)
5.
 雨戸工事(網戸は通常サッシ工事に含まれる)
6.
 BSテレビアンテナ
7.
 ガレージならびに、ガレージ前の道路との境界工事
8.
 水道・ガス・電気メーターの移設



 ■本体工事費の他に掛かる費用・経費等を記載しておきます
建築費のみならず、建ってからの経費等も結構必要なので、この費用も踏まえた予算設定をしておきましょう。
1.
設計監理料
2.
工事契約書や建築確認申請書、公庫や銀行借入時に必要な印紙代
3.
表示登記・保存登記・融資・司法書士などの各手数料・申請書代
4.
公庫借入時の保証費・完成保証費・瑕疵担保保険費・性能表示申請に関わる諸費用
5.
完成後必要な火災・地震・生命保険代
6.
建築時にかかる税金・登録免許税(保存登記・抵当権設定登記)・
不動産取得税・印紙税、建築後毎年かかってくる固定資産税・都市計画税
7.
地鎮祭・上棟式・新築祝い、近隣への挨拶手土産、
職人さんへの茶菓子代(最近は不要の例も多い)
8.
新築中の仮住居費、引越代



だから、単に坪単価がいくらと言っても算出の仕方によっては大きな開きがあるという事なのです。
また、同じ条件で算出しても規模、階数、建物の形状によって坪単価は様々に変化するので一概に高い、安いと言えない物なのです。
小さい面積より大きな面積の方が、また階数の多い方が坪単価は安くなります。解りやすく言うと、小さくても平屋であっても基礎は必要ですし、屋根だって同じように必要であるからです。
形状としても凸凹の平面形状の建物より、上下階が同じ平面を持つ建物の方が外壁面積が少なく、屋根の形状も簡単になるので坪単価は安くなります。また、部屋の周囲にベランダが回り込んでいるような形状をした物や、大きなバルコニーが多々あるような、実床面積として計上出来ない建物に関しては、坪単価は大きく跳ね上がります。

坪単価とはこのように漠然とした物であり、あくまで参考にしか過ぎませんので、人の言う単価に惑わされないようじっくりと予算設定する事が大事であると思います。



 ■当事務所の設計で基本的に本体工事に含むもの
当事務所で設計する建物については下記の項目を本体工事に含むものとして設計しています。ただし、施主さんの意向により、部分的に入れない場合もあります。
照明器具 建物や部屋の雰囲気に合わせた器具を選定し、設計内に入れます。
弱電設備機器 TVアンテナ(BS付き)、インターホン、電話配管(通線は別途)
冷暖房設備器具 換気扇、冷暖房設備器具の容量を算定して設計内に入れます。
給排水設備 外部散水栓等すべて
住宅設備機器 システムキッチン、ユニットバス、洗面化粧台等すべて含む。
外構工事 植樹の樹種、庭のレイアウト、雨水排水、門扉、ガレージに至るまで
店舗の場合の看板 看板等も当事務所でデザインし、基本的に含むようにしています。
店舗の内装 設計を別途発注される場合もありますが、基本的には当事務所にてデザインしています。

     



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